ま"’s blog

電子工作の部屋?

モバイルバッテリーの実容量を測ってみる

先日、USBテスターを購入しました。

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取説を見るとバッテリーの容量を測定するには、「電子負荷を接続して」とあります。
「電子負荷」とはなんぞや?。スマホでもいいとは書いてありますが、放電完了前に充電完了しちゃったら最後まで測定できないよね?。

取説の図では放電抵抗負荷1A10W/5Ωとあります。

放電するための電子負荷を接続するの図

幸い手元に1W/10Ωの抵抗が一袋あったので、「2個並列に繋げれば5Ωだな」と安直に考えて、2個並列に10Ω抵抗をブレッドボードに配置してUSBテスターに繋いだところ…

抵抗が焼けこげ、ブレッドボードが溶けました

なぜかといえば、W数を見逃していたからです。10Ωの抵抗に5vの電圧をかけると0.5A流れるので、wとしては5V*0.5A=2.5Wになります。耐電力1Wの抵抗ではキャパオーバーで、溶けます。その熱の余波をくらってブレッドボードも溶けました(残念ながら写真は残してないです、黒歴史なので^^)。

どうすれば抵抗が壊れない5Ωの電子負荷が作れるか

前提条件として、手持ちの部品(10Ω/1W抵抗)で5Ω/5W(1A流すと5Wになるので)の電子抵抗を作るかということになります。

まず何個直列に接続すれば5V直結しても壊れない?

抵抗にかかるW数は以下のように計算できます。

W = VI = V*V/R = V^2/R

  • 1個では2.5W→壊れる
  • 2個だと1.25W→キャパオーバー
  • 3個で30Ωなので、0.83Wで容量範囲内

何列並列にすれば5Ω?

列数をyとおくと

30 / y = 5
y = 30 / 5 = 6

ということで、3個直列の抵抗群を6列並列に並べれば5Ω/5Wの電子負荷になることがわかりました。

んで、できたのがこの抵抗器です:

バッテリー容量を測定するための5Ω/5Wの電子負荷

回路図?。そんなものはありません。10Ω/1Wの抵抗を3x6個並べてハンダ付してUSB端子と繋げるだけです。あ、LEDとその保護用の抵抗もありますが、そんなものは飾りです。偉い人にはわからんのです(一部の人にしか分からないネタで申し訳ない)。
これを負荷としてモバイルバッテリーとをUSBテスターを挟んで繋げて、バッテリーがなくなるまで放置すれば容量が測定できるという訳です。

結論

個別にどれがどれほどの電力量だったかの測定結果は使ったモバイルバッテリーが新品ばかりじゃなかったため、比較にならないので割愛します。
結論としては「バッテリー容量の宣伝文句はあまりあてにならない」です。昇圧回路のロスがあるし、ベースとなるリポ電池の容量として間違いではないので、あながち嘘ではないものの、実容量は表記の8〜9割程度と思った方がいいです。

うんちく(細かい理論が嫌いな方は無視してください)

モバイルバッテリーの容量を示す値として「mAh」が普通です。ですが、mAhって電圧に関係ない単位だって知ってましたか?。「m」はミリ、つまり1/1000。「A」はアンペア、つまり電流。「h」はhour、つまり時間。5000mAhなら「50mAの消費電力で100h持つ」ということになります。んが、ここで電圧が出てきません。バッテリーの立場からすれば「電圧は一定なので当たり前」と言えるのですが、モバイルバッテリーは違います。モバイルバッテリーの主な電源はリポ電池(リチウムポリマー電池)です。リポ電池の電圧は通常3.7V、なのに供給電圧は5V、この差をどうやって埋めているかというと3.7Vを5Vに引き上げる「昇圧回路」がモバイルバッテリーに組み込まれているからなのです。
「それがどうした?」と思われるでしょうが、昇圧回路で電圧を引き上げる際に仕事量保存の法則が効いてくるので、電圧は変わってもワット数は変わらない、つまり3.7Vのリポ電池の容量を5Vの出力電圧に昇圧した場合、ロスが無くとも3.7/5の係数で容量が減るのです(5VでのmAhがです)。
実際にはこの昇圧ロスは1割ほど、つまり実容量は9掛けするのが妥当なようです。
なぜこのような電圧を無視した容量表記がまかりとおっているかといえば、「スマホの電池もリポ電池で3.7Vだから」なんでしょうね。つまり給電側と充電側とでバッテリー電圧が同じなら、昇圧回路と充電回路のロスがある程度容認できる(たぶん2割くらい?)ので、同じ単位での容量表示で問題ないんでしょう。
個人的には電圧も加味したmWh容量表示の方が信頼できるので、この単位で容量表示しているモバイルバッテリーが好ましいです。